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【このひと】モヤモヤを可視化して社会に貢献を 〜志賀大祐さん(イスパニア語学科'11卒)

2024-12-15 21:51:24
2024-12-15 23:03:38
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 今回は独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)の志賀大祐さん。ジェトロは47都道府県、世界56カ国76事務所を構える。事業内容は、日本の商品の輸出、中小企業が海外へ進出する際の支援等多岐に渡る。貿易の拡大及び経済協力の促進に寄与することを目的として設立された組織だ。

 志賀さんは「海外で仕事ができたら楽しいだろうな」と高校生の頃から漠然と考えており、国際色豊かな本学に進学した。当時は中国ブームだったが、周りと同じだと面白くないと感じ、5億人の話者がいるスペイン語に引かれて学科を選択した。在学中は体育会水泳部に所属。全体と個人のモチベーションのマネジメントに苦労したと話す。「タイムの世界なのでその人が頑張れば良いという考え方もできるが、チーム全体は盛り上がらない。どのようにほかの人を巻き込んでモチベーションを上げていくか考えることができたのは、良い経験になった」と振り返った。

 3年次にスペインに留学し、サラゴサ万博に訪れたことがジェトロとの出合いだった。ジェトロは、海外で開催される万博で日本館を運営している。「海外で働きたいと考えていたが、日本全体を海外にアピールする機会があるのは政府系機関だと思い、ジェトロで働きたいと感じた」という。

 卒業の時期に東日本大震災が発生。ジェトロに入って初めに取り組んだのは風評被害対策だった。「海外の人は、原発事故で東北地方の食品がすべて汚染されていると誤認識していたように思う。そこで、安全な食品と懸念がある食品をジェトロで調べた。正しい情報を発信して、大丈夫なものは海外の人に試食してもらう活動をした」と話す。

 2019年よりメキシコ事務所に駐在。新型コロナウイルスのパンデミックによる劇的な変化が大変だったと振り返る。「メキシコには日本企業の工場が多く、人手が必要。しかし、メキシコ政府から工場の人員削減を通達され、多くの日本企業が頭を悩ませていた。そこでジェトロが一緒になって解決策を考えたことが思い出」と語った。コロナ禍後は日本企業が海外に進出するための情報を発信し、特に食品や酒のプロモーションを民間企業とともに海外で行った。

 今後については「常にモヤっとしたものを可視化できる人間になりたい。なんとなく海外でビジネスをしたいと思っていても、モヤモヤしていると何をしたらいいのか分からなくなる」と述べた。「筋道ではなくヒントを与えられる人間になりたい。筋道をつけることが一番だが、その人が考えなくなってしまう。与えたヒントをつなげてその人が実態を可視化できるようになってほしい」とも語る。

 学生に対して「社会人からすると学生時代はうらやましい時期。いろいろなことをいろいろな方法で教えてもらえるので、疑問に思ったことは周りの大人に聞いて自分の中のモヤモヤを減らしていく。そうすれば社会で貢献したい分野がすんなりと分かるはずだ」とメッセージを送った。

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