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テレビを見たり、自分よりも年上の人と話したりすると「昔は良かった。でも今は……」と聞くことがある。みなさんは、こんな言葉を聞いたらどう感じるだろうか。私は、これを聞くとモヤモヤした気持ちになる。昔の出来事を懐かしく思うのは納得できる。思い出が、その人にとって良いものだったことに間違いはないだろう。ただ「でも今は……」なんて言うほど「今」は良くないものなのか。
女性アイドルグループ櫻坂46の楽曲「何歳(いくつ)の頃に戻りたいのか?」(作詞:秋元康)に、次のような歌詞がある。
本当にあの頃そんな楽しかったか?/きっと特別楽しくはなかっただろう[中略]/思い出の日々は普通だ/目に浮かぶ日々は幻想/美しく見えるだけさ[中略]/大人になったその分だけ青春を美化し続ける
その人にとっての青春の時代が美しく見えるのは、人間の性かもしれない。しかし、それを引き合いにして「でも今は……」と言うのは、今を生きる誰かにとっての青春を否定することになるのではないか。
ところで、みなさんには「戻りたいあの頃」があるだろうか。もしあるとすれば、それはいつだろうか。そして、なぜだろうか。今に嫌気が差したからだろうか。私は、過去に戻りたいと思うことはない。後悔するようなことがないわけではないが、それをかき消すくらい今が充実している。もしかすると、無理矢理にでも充実していると感じるようにもがいていると言う方が正しいかもしれない。ただ、今が最高で、この先の未来はもっと良いものになると信じている。
今はいずれ昔になる。誰かにとっての、美化したくなる対象になる。少しくらいの嫌なことやつらいことがあったとしても、振り返ればきっと良かったと思える。そんな日が来ることを信じて今を全うし未来を向くことが、自分のためでもあり、今を生きる誰かを肯定することにもなるのではないだろうか。
最後に、再び同曲の歌詞を引用する。
今が過ぎる足音が聴こえなくて(目の前の景色に意識を奪われて)/こんな今もいつの日か輝くんだ(大人への階段)[中略]/過去に戻れやしないと知っている/夢を見るなら先の未来がいい
(ここに咲く夢)